グローバル化とデジタル技術の急速な発展により、小売業におけるサプライチェーンと物流システムはかつてない変革期を迎えています。顧客の購買行動が多様化し、オムニチャネル戦略が標準化する現代において、いかに無駄なく、迅速に、そして環境に配慮した形で商品を届けるかは、企業価値を左右する最も重要な指標となりました。
特に日本のビジネスパーソンにとって、物流業界における人手不足や労働時間の上限規制をめぐる問題は、喫緊の課題として重くのしかかっています。国内のシステム改善や既存の業務フローの見直しだけでは、根本的な解決に至らないケースも増えてきました。こうした閉塞感を打破し、次世代のビジネスモデルを構築するためには、海外の先進的な事例に触れ、グローバルスタンダードのソリューションを直接肌で感じることが不可欠です。
本記事では、小売と物流の未来を形作る世界有数のBtoB見本市である「Retail Supply Chain & Logistics Expo」に焦点を当て、その圧倒的な魅力と、現地での視察を最大限に成功させるための実践的なノウハウを詳しく解説します。
本展示会は、小売業界に特化したサプライチェーンおよび物流のイノベーションを推進するための、イギリス最大級の専門見本市です。正式名称は「Retail Supply Chain & Logistics Expo」であり、毎年多くの起業家、経営者、そして物流やITの担当責任者が世界中から集結します。
2026年の開催情報は以下の通り確定しています。
開催日程:2026年11月11日(水)〜 12日(木)
会場:ExCeL London(エクセル・ロンドン / イギリス)
出展企業数:200社以上(予定)
この見本市では、人工知能を活用した高度な需要予測システムから、最新のロボティクスを駆使した倉庫自動化ソリューション、環境負荷を低減する持続可能なパッケージング技術まで、次世代のサプライチェーンを支えるあらゆる技術が網羅されています。単なる技術展示にとどまらず、約100名にのぼる業界エキスパートによる専門セミナーや、成功事例を共有するネットワーキングの場が豊富に用意されている点が、本見本市の大きな特長です。
国内のビジネス環境が厳しさを増す中で、ロンドンまで足を運ぶ最大の理由は、欧米市場が日本よりも数歩先を行く「返品物流(リバースロジスティクス)」や「サステナブルサプライチェーン」の先進地だからです。
欧米のEコマース市場では、顧客体験を向上させるために柔軟な返品ポリシーが導入されていますが、それに伴い返品された商品をいかに効率よく再販・処理するかが大きな経営課題となっています。本見本市では、これらの逆方向の物流を最適化するためのSaaSプラットフォームや自動化ツールが多数展示されており、これから同様の課題に直面するであろう日本企業にとって、非常に価値の高い先行事例となります。
さらに、温室効果ガス排出量の削減や脱炭素化に向けた取り組みは、今や投資家や消費者から厳しく評価される基準です。ヨーロッパ基準の厳格な環境規制に対応した最新の配送最適化アルゴリズムや、効率的なサードパーティ・ロジスティクス(3PL)との連携手法を学ぶことは、日本の事業者がグローバルな競争力を維持・強化するうえで強力な武器となります。
本見本市では、具体的にどのような技術に注目が集まることを見込んでいるのか、近年特に投資が集中している分野をいくつか紹介します。
一つ目は、デジタルツイン技術を用いたサプライチェーンの可視化です。現実の倉庫や配送ルートを仮想空間上に再現し、天候や交通渋滞などの変動要因をシミュレーションすることで、最適な在庫配置や配送計画をリアルタイムで導き出すシステムが多数展示されます。
二つ目は、倉庫内作業の完全自動化に向けた次世代ロボティクスです。従来の定点型ロボットだけでなく、自律移動型ロボット(AMR)や、画像認識システムを搭載したピッキングロボットが、より複雑な形状の荷物を正確に処理するデモンストレーションは必見です。人手不足が深刻化する日本市場においても、導入ハードルが下がりつつある最新の自動化機器を直に確認できる絶好の機会となります。
三つ目は、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの向上です。商品が生産者から最終消費者の手に渡るまでのすべてのプロセスを透明化し、改ざん不可能な形で記録する技術は、ブランドの信頼性を担保するうえで欠かせない要素となっています。
会場となるExCeL Londonは、イギリスを代表する国際展示場であり、その規模は広大です。2日間という限られた会期の中で200社を超えるブースをすべて見て回ることは現実的ではありません。視察の投資対効果を最大化するために、以下の戦略を取り入れることをお勧めします。
本見本市の入場パスを取得すると、同じ会場内で同時開催されている「Smart Retail Tech Expo」「White Label World Expo」「E-commerce, Packaging & Labelling Expo」といった関連イベントにも無料で入場することが可能です。店舗内テクノロジーからEコマース、パッケージングまで、小売業の川上から川下までを一貫して視察することで、サプライチェーンの全体最適化に向けたインサイトを立体的に獲得できます。
視察を単なる見学で終わらせないためには、出発前の準備が命運を分けます。倉庫内のピッキング作業を省人化したい、ラストワンマイルの配送コストを削減したいなど、自社が抱える具体的な課題を明確にしたうえで、公式サイトの出展者検索システムを活用し、訪問すべき企業のブース番号を事前にマッピングしておきましょう。
注目度の高いSaaSプロバイダーやロボティクス企業のブースは、世界中からの来場者で終日混雑します。技術的な質疑応答や、自社のシステム要件に合わせた詳細なデモンストレーションを希望する場合は、あらかじめ出展企業の担当者に連絡を取り、会期中のミーティング枠を確保しておくことが視察を成功させる秘訣です。
ExCeL Londonへは、DLR(ドックランズ・ライト・レイルウェイ)のCustom House駅またはPrince Regent駅を利用するのが一般的です。開場直後や閉場間際は公共交通機関が非常に混雑するため、少し時間をずらして移動するか、会場周辺の動線をあらかじめ確認しておくことで、余計な体力と時間の消耗を防ぐことができます。
海外見本市の視察において、現地での限られた時間を有意義に使うためには、フライトや宿泊施設といった基礎的なインフラの確実な手配が欠かせません。特にロンドンのような世界有数の大都市では、大規模な見本市の会期中、会場周辺のホテルは数ヶ月前から予約で埋まり、宿泊費も高騰する傾向にあります。
ハルカゼ旅行社が出張、視察をサポートします。私たちは、ビジネス渡航に特化した豊富な知見を活かし、皆様の視察スケジュールに合わせた最適なフライトの選定から、ExCeL Londonへのアクセスに優れた安全な宿泊施設の手配まで、きめ細やかなサポートを提供いたします。時差を考慮したゆとりのある旅程のご提案や、現地での円滑な移動を後押しする各種手配を通じて、皆様がビジネスの主目的である情報の収集と商談に専念できる環境を整えます。煩雑な渡航準備にかかる時間を削減し、万全のコンディションで展示会に臨んでいただけるよう尽力いたします。
デジタル技術の進化と社会構造の変化により、物流の世界は今まさにパラダイムシフトの只中にあります。机上の空論やインターネット上の二次情報だけでは、最新のシステムがもたらす本当の価値や、業界の熱気、そしてグローバル市場のダイナミズムを正確に捉えることは困難です。
本見本市の会場に実際に立ち、革新的なソリューションを自らの手で操作し、世界を牽引する開発者や各国の業界トップランナーたちと直接言葉を交わすこと。そのリアルな経験こそが、自社の物流戦略を根本からアップデートし、未来のビジネスを力強く前進させるための最大の原動力となります。激化する競争を勝ち抜き、持続可能なサプライチェーンを構築するために、ぜひRetail Supply Chain & Logistics Expoへの参加を計画し、世界最先端の物流テクノロジーをご自身の体で感じ取ってください。現場で得られる一次情報と人脈こそが、御社の次なる成長を切り拓く確かな鍵となるはずです。